機構からの提言

本機構の講師が提言します。

私たち日本文字文化機構は、漢字教育・国語教育や教育そのものについて、提言をしています。一読していただいて、ご意見等をお願いいたします。

①「現行の漢字学習法の変革が必要とする理由」

②「漢字の書き取り〇×問題の一考察」

③新元号「令和」について (NEW)

 

①現行の漢字学習法の変革が必要とする理由

                  文字文化研究所    伊藤直樹

 私達の提唱する古代文字からの新しい漢字学習法の目的は、以下の一~四の諸問題を解決することであります。

1、 専門とされる漢字学習者、及びアカデミーの体質問題
中国からの資料提供の確保が権威の証とする体質
白川学から十数年以上遅れた過去の誤った説の蒸し返しに終始している。
漢字を捨てた中国簡体字(音すら古代音とは別のもの)に席をおく中国人学者に媚びることで権威を保持する東大・京大の漢字学者を重視するのはもうやめるべき。

2、 〝国語〟とは母国語それとも国文学語?
     国語教師の主流、国文学派の問題

漢字は苦手 そもそも漢字は中国のもの
(政治問題と絡めてしまい本質を見失う)
日本には麗しき〝やまとことば〟〝仮名〟がある。と言わんばかり。
漢字よりもそれこそ重視すべきと考える国文学派国語教師の偏狭な姿勢は改めるべき。
なぜならば、漢字は訓があり、既に国字なのだから。

3、 国際化(グローバリズム・アクティブ・ラーニング)による学校現場の誤解と知識不足

 今さら漢字? 漢字ってただの丸暗記でしょ、そんなものコンピューターで処理すれば良い。それよりも英語重視すべきの意見
それこそ本末転倒であり、母国語を軽視するもの、しかも多くの英語専門の知識人はこぞって、先づは国語重視と言う。
しかも表意文字である漢字は、アルファベット等の表音文字が疾(とう)に失った人類普遍の古代の世界観を残す唯一の奇跡の文字なのです。
漢字文化の本質を理解することが、日本が国際的に活動する上で優位な立場となりうること理解するべきです。
英語はむしろ、それを後押しするものでしょう。

4、 学校現場の漢字学習、書き取り中心の問題点
 問題点
義務教育で教わる漢字学習の目的は、社会人として生活するために必要な(最低限の)国語力を失うもの
しかし現在の日本語は、外国から入ってくる輸入語を国語として翻訳する力はなくそのままカタカナ語ばかり、逆に日本語の輸出は極くわずかという、累積赤字の状態。国語力は国力にそのまま反映する。
その国語力を鍛えるものこそ漢字力
しかし従来型の書き取り丸暗記及び検定方式では、本当の国語力は身に付かない。
量を増やさず質、内容を高めることで充分輸出をし、さらに輸入のカタカナ語に対し新たな国語を獲得することが可能な漢字学習法への転換こそ、義務教育課程の喫緊の課題であると考えます。


②「漢字の書き取り〇×問題の一考察」


                     文字文化研究所    伊藤直樹

 漢字の勉強と言うと、何を想像するか、
 多くの人は子どもの頃のあのいまわしい記憶、書き取りの〇×の不条理さ、或は丸暗記の苦痛といったマイナスイメージ、まして現役の子どもの達にとっては地獄と言い放つ強者まで存在するようだ。
 もう一つ戦後教育の忘れ物と言われるのが、「書写」と「漢字学習」とされている。
 しかしその忘れ物は現在の特に義務教育現場においてほとんど関心の薄い存在となっている。
 一方で国語教育の中で「漢字」はどのような学習の扱いとなっているのだろうか、
 現場の先生方とお話しをすると、国語は漢字だけをやっているわけではなく、読解や作文コミュニケーション力等やることが多く、漢字は業者ドリルで家庭学習にあてるしかないという意見を多く頂く。
 また教育委員会の担当者と外部の専門家の力をとり入れる学習についてもお話しをしても自身の担当分野の話に終始し、子ども達の日本語の力を育むことがこれからの日本の国力につながるといった視点が無く、英語・IT・キャリア教育等そのほか大勢の中の一つの駒という考えのようである。
 したがって現場の授業に入り込むことは至難の事、まして現場の要望以外の事を口出ししたらもうそれで終わりですよとクギを刺されてしまう。例え能力的に未熟であっても現場の教員と地域の専門家は対等の立場で子ども達の真の学びを育む関係となっていない。現場のこうした考えを変えることが必要と痛感していると同時に、現場とは敵対関係ではなく、対等な立場で意見交換できる様もっと互いに信頼関係を築いていく、筋道を教育委員会が荷っていくことが、その地域の教育の活性化につながることであると認識している。
 今回は漢字の書き取り〇×問題について現在の学校現場の苦悩と問題点、その改善策について考えてみたい。
 漢字の書き取り〇×は教員にとっても悩ましい問題であろう。
 以前ある小学校で『書写』のモデル授業を行なう機会があり、その後教員研修として『漢字』の成り立ちを話す機会があった。最後に質問でこの〇×問題について尋ねられた。
 私には一つの基準があるが、しかしそれはここで押し付けるものではなく、市教育委員会全体で統一見解を出すことが必要、その問題解決の為の研修会を開く用、教育委員会担当者に提案した。
 また別の中学校では、国語担当で大学卒業時「漢字」をテーマとしてまとめたという教員の方とお話をした中、この書き取りの話となり、〝二〇一六年文化審小委の「止め」「はね」少し違ってもOkの指針〟を説明したところ、全くご存知なかった。現場の教員はたしかに多忙であろうが、このような指導内容の変更に関わること、或は現場の独自性が認められること等にもっと敏感でなければと思うのだがどうであろうか、
 『書写』『漢字』の学習を考え中、『漢字』についての考え方・歴史観・文字の解説等には多く異をとなえるが、早稲田大学の笹原宏之氏『謎の漢字』は面白かった。特に漢字の試験について、中国の科挙を通して、日本の書き取り〇×問題への考え方、文化審議会国語分科幹事小委員会副主査として、常用漢字表の字体・字形に関する指針(二〇一六)作成の中心的立場としての考えは共感することも多かった。

〝現代において文字は人を幸せにするためのものであるはずである。細部をあげつらって一定の範囲の中で個性が現われた筆跡(手書き・・・伊藤)にまで「×」を与える教育現場や社会がもたらしたこうした誰も幸せにしない窮屈な趨勢は打開する必要がある。文化庁の「指針」はそういう考え方によってまとめられた。笹原宏之著『謎の漢字』〟

 漢字テストの〇×が今日の様な異常な誤りさがしの体となってしまった歴史について、
 これも笹原氏の著書に
 明治以降1部に江戸時代に顕在化した過度な規範意識が教育界に適用されることがその萌芽となり、その後1部はさらに精緻化され先鋭化が進んだ、笹原氏は触れてはいないが、この精緻化・先鋭化が一つには、軍事教育に利用され、戦争への関わりとは無縁とは言えないのではないかと私は考えている。
 そして戦後、漢字廃止運動を生き延びた漢字は、それ以前の毛筆=習字教育から、硬筆学習へと学友形態が変化していく中、試験においては、漢字はしっかりと見なければ、と採点者が気になった箇所に関しては微に入り細にわたり採点するという状況を生み出していく。
 教育現場では、それをしっかりやることが漢字学習であるといった考え方が大勢をしめているように思われる。
 笹原氏はここで中国清朝が科挙の試験で形式主義と採点法の形骸化が国を弱体化させたことを例とする。
 手書きの漢字を目にしたときに、デザインのレベルでそれを評価することは、手本にある字形の複製に適正や技能を欠いてはいても優れた他の力をもつ人材を養成し、また選び出す際の障壁となりうると笹原氏は述べるが、その手書きの漢字とは、毛筆書ではなく硬筆書であることは言うまでもないこと。
 文字によって伝えることは文章の内容、そしてそれを効果的に伝わるようにする文章の表現力こそがより優先される評価基準となるべきであろうととも、笹原氏は述べるが、その効果的に伝わる、文章の表現力の面においても法筆書=『書写』『書道』の学習は疎かにしない方が良い。1端忘れ去られている様な、片隅に追いやられているものに光りをあてることは大切なことであると私は考える。
 最後に笹原氏は述べている。

〝毛筆や手書きが減り、俗字・略字などの異体字も少なくなる中で、字形の細部が意味あるものに感じられてしまうのは無理もない面もある。しかし、細部への硬直した意識から解放され、語を表わすための文字を伸び伸びと用いた表現力に意識が向くことの方が望ましい。文字の細かすぎる部分が人を苦しめるという状況は解消されなければならない。文字を書く側は、読む人の心理にもある程度配慮しながら、必要に応じて丁寧に整えて書くとよいだろう。そしてそれを読む人たちも個性に対する寛容と理解をもって文字の中に本意を読み取り、評価していくことが最も大切なことではないだろうか・・・以下略〟

 私の考えは究極には漢字の書き取りテストは徐々に減らしていって良いと思う。その一方で漢字学習も〝読み〟〝書き〟〝話す〟〝聞く〟のコミュニケーションの本筋をふまえ、そう言うと文章力中心と考えられるが、その文章の中どの漢字をどんな場面で扱うか、最もふさわしい文字をどう選択するか、それには成り立ちも意味も正しく理解する必要がある。その方に軸足を置き、一方で必要に応じて丁寧に整えて書くことと、最低限の字体・字形の約束を学ぶこととして、毛筆書写学習の改善が望まれると考えています。

      具体的には〇×の基準として私案は別途
 
      参考  笹原宏之著 謎の漢字 中公新書

③新元号「令和」について